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6月 17, 2020

「トランスクリプト」は機動力のある情報提供ツール

日経平均は6月8日時点で新型コロナウイルスの感染拡大で世界的な株安となる前の2月21日以来、約3ヶ月半ぶりに終値で2万3,000円台を回復した。これは決して新型コロナウイルス感染症が世界中で蔓延を始める以前の経済状況に戻ったという意味ではないないことは明らかである。世界各地で経済活動が再開されてはいるが、新型コロナウイルス前の水準にはほど遠いのが実態である。

日本に限って言えば5月21日以降も緊急事態措置を実施すべき区域に指定されていた北海道、東京、神奈川、埼玉、千葉の5都道県についても5月25日に緊急事態措置の解除がなされたものの、現状では新型コロナウイルスとの共存を見据えた厚生労働省の推奨する「新しい生活様式」への転換に四苦八苦している状況である。

この様な状況下において国内の上場企業は定時株主総会の開催が集中する6月を迎えている。約3,700社の上場企業の2/3の約2,500社が3月期決算企業であることから通常ならば6月はほぼ毎日かなりの数の企業が定時株主総会を開催しているはずである。

しかし、緊急事態措置の解除がなされた現状でもほぼ毎日の様に数は3月〜4月ほどでもないが依然として新型コロナウイルス感染者の報告がなされており、地域によってはクラスターも発生しているところもある。このことから6月に入って定時株主総会を7 月以降の開催に変更すると公表する企業も現れており、今後さらに増えると思われる。更に金融庁はこの定時株主総会そのものを延期するだけではなく、取り敢えず当初予定通りに定時株主総会を開催した後に、それを「継続会」という制度を設けて、後日に続ける方法も提案している。定時株主総会の延期に関しては、以前にも認められてきており、実際、東日本大震災時に主に東北に事業拠点を置く上場企業数社が延期をしている。しかし、今回はグローバルに事業展開している大企業でも定時株主総会の延期に踏み切るところが現れている。

本稿では4月中旬から5月末までの期間において予定されていた3月期決算説明会が、実際はどの様に行われたのか、また当社の決算説明会イベントのトランスクリプト作成にどの様な影響があったのかについても、現在までに把握が出来ている範囲で紹介を行うことにする。

まず初めに当社がトランスクリプトの作成を行なっているパートナー企業の状況であるが、4月に決算説明会を予定していた企業の内、70%の企業が①従来通りの説明会(Live)、②電話会義(Live)、③Webcast (Live)、④電話会議・Webcast (Non Live)のいずれかの方法で決算の説明イベントを行い、当社もトランスクリプトの作成・配信を行うことが出来た。一方、30%の企業は予定していた説明会の代替イベントはいずれ行うとしてとりあえずは当初の予定を取り止め、現在まで詳細な代替えイベントに関してはまだ明らかにされていない。この結果、3月下旬に当初予定していた時点より4月の決算イベントのトランスクリプトの作成はおよそ30%程度少なかったことになる。これらの企業は概ね時価総額では中小型株式に分類される企業であった。また4月のLive:Non Liveの比率は55% : 45%であり、Liveの方がやや上回っていた。

5月に関しては、決算説明会の開催を予定していた企業の内、73%の企業が前述した4つのいずれかの方法で決算説明を行なっており、同イベントのトランスクリプトを作成・配信することが出来ている。しかし、27%の企業は現時点においてもまだ説明会の代替えイベントの有無、方法、日時などの詳細は明らかにしていない。また5月のLive : Non Liveの比率は71% : 29%であり、4月と比較してLiveの方が大幅にNon Liveを上回っていた。知り合いのアナリストや機関投資家に伺ったところ、4月のNon Liveに関しては質疑応答が出来ないことへの不満の声が非常に多かった。従来なら決算説明会後にアナリストや投資家は企業訪問による個別取材をすることが恒例となっている。今回は企業、アナリスト、投資家の大半は対面ミーティングの抑制・禁止措置を取っており、また会社への出社状況も様々である。しかも在宅リモートワークでの個別取材は企業、アナリスト、投資家も不慣れであることから、5月は質疑応答や会社の決算説明の雰囲気が少しでもわかり易いLiveの決算説明イベントが大幅に増加した理由になった模様である。

異例尽くめの4月・5月の決算説明会イベントであったが、当面はどの月の決算説明イベントでも従来の様な実際に会場に出向いての“決算説明会”は見送られる可能性は高いであろう。一方、決算説明イベントのトランスクリプト作成に関しては、突発的な説明会の取り止めや日程変更はあったものの、トランスクリプト作成に必要なイベント音源の企業からの入手はほとんど問題が無く、日本語のトランスクリプトは従来通り決算説明イベント日の翌日午前8時、英語版は翌々日の午前8時に完成しており、投資家にも問題なく配信することが出来ていた。

2018年4月に導入されたフェア・ディスクロージャー・ルール以降、投資家に対する情報伝達手段の主流のひとつになりつつあった決算説明会イベントの動画作成に関しては取り止めた企業もあった。当社調べでは今回の決算説明イベントでおよそ30%程度の企業が動画作成から電話会議(Live) に変更している。また、今後はソーシャル・ディスタンスの確保の問題やそれに伴う入場制限なども考慮しなければならないため、従来の様な会場においての決算説明会イベントの動画を作成し、アナリストや投資家に公開する機会は必然的に減少し、企業の情報伝達手段も更なる多様な方法の導入が求められると思われる。

新型コロナウイルス感染症が当面完全には鎮静化されない模様であることから、当社は少なくとも今年度の企業の情報開示イベントは散発的で頻度はやや増加していくと見ている。まず、最初に触れた定時株主総会に関しては従来なら6月に集中して行われてきているが、金融庁は延期以外にも取り敢えず当初予定通りに定時株主総会を開催した後に、それを「継続会」という形をとることを提案している。これは新型コロナウイルス感染症リスクを抑えるために定時株主総会が一定以上を超える長時間にならないための配慮であり、また前期末時点の経営判断基準の前提が新型コロナウイルス感染症の影響でかなり違ったものになっており、株主に公開された決算関係の計算書類、監査報告等に関しても株主が更なる検討の機会を確保出来るようにすることも考慮されたと思われる。

また同様に新型コロナウイルス感染症の深刻な影響下にあった2020 年3 月期の財務諸表の作成と次期予想が作られたタイミング、整合性、経済前提条件は例年に比べて極めて高い不確実性の状況下で作成されている。また次期予想の詳しい数字や前提を開示できなかった企業も多くあり、今年度は例年よりも頻繁に業績修正が行われる可能性が予見される。

この様な環境において企業が業績修正の説明イベントを開催した場合も、当社のトランスクリプトは機動力を持って対応し、グローバルの投資家に企業が発信する最新の情報を迅速に提供することは可能である。