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April 09, 2020

Transcripts as a Powerful Communication Tool

COVID-19による混乱、自粛、FDルール導入の影響と企業IR活動の変化

COVD-19(新型コロナウイルス感染症)の猛威が拡大する中、企業の決算説明会開催方法にも変化が起きてきており、イベントや集会の延期や自粛が始まった2月以降は、カンファレンス会議場で催される説明から、企業だけで事前に録画撮りを行なったWeb配信説明会方式に切り替える企業が増加している。 いずれにしても録画済Web配信説明会やライブWeb説明会、または従来のカンファレンス会議場方式でも、企業にとってインターネットを通して配信するために編集作業の時間が必要であり、決算発表日から説明会の内容が配信されるまでには平均して最低数日間以上のタイムラグが生じている。また英語版の作成も含めれば、投資家に配信するまで追加的に更にもう数日間の時間を要する。 説明会の音声内容を正確に書き起こしする当社の日本語及び英語の「トランスクリプト」は非常に短時間で完成させることが可能であり、タイムラグによって生じる世界中の投資家の情報アクセスタイムの不公平性を大きく是正することに貢献できる。 

またこの4月で施行後約2年が経過するフェア・ディスクロージャー・ルール(以下「FDルール」という。)によって、企業と投資家及びセルサイド・アナリストの両者間においても、情報伝達手段の評価に対して新しい変化が起きてきている。 今回のSCRIPTS Asia Insightsは、こうした変化の中で当社の「トランスクリプト」が果たしていける役割について触れてみた。

「案ずるより産むが易し」

金融庁の金融商品取引法改正によって新制度のフェア・ディスクロージャー・ルール(以下「FDルール」 という。) が2018年4月1日に制定されて約2年が過ぎた。 ある大手IRマネージメント会社が行ったファンド・マネジャーとバイサイド・アナリストを含む機関投資家及びセルサイド・アナリストに行った企業のインベスター・リレーションズ活動(以下IR活動)に関する2019年のアンケート調査によると、FDルールが施行される以前の2017年と比べ、企業のIR活動が『大きく進化した』及び『やや進化した』と変化を感じた回答者は全体の62%を占め、施工前の57%より5%ポイント増加している。一方、『やや後退した』及び『大きく後退した』と感じた回答者は全体の15%から7%にほぼ半減したというアンケート調査結果になっている。 

また日本証券アナリスト協会のディスクロージャー研究会も同様のアンケート調査を同協会登録アナリスト(登録しているファンド・マネジャーとバイサイド・アナリストを含む)に行っている。その中のひとつのFDルールが導入されることによって【発行体による早期の情報開示を促進し、ひいては投資家との対話を促進する】という積極的意義についての評価に関しては、施行前は44%ものアナリストが【発行体による情報開示がこれまでより後退し、対話がしにくくなることを懸念する】と回答していたが、施行後にはその割合が30%まで低下しており、懸念していたほど投資家との対話が後退していないことが数字から読み取れる。

要するにFDルール施行前の株式市場参加者はやや過度にFDルールのマイナス面だけを懸念していたのかもしれない。 これら2つのアンケート結果の変化を見るかぎり、施行後およそ2年間がたった今はいわゆる「案ずるより産むが善し」的な捉え方に変化してきていることが窺える。

この変化は何に起因しているのであろう? 前述の大手IRマネージメント会社の同アンケート調査によると、FDルール施行後、特に機関投資家およびセルサイド・アナリストが企業のIR活動に大きな変化を感じた理由として挙げているのが企業の情報開示資料の充実である。具体的には決算説明会やアイアールデイ説明会で用いられた説明会補足資料、Q&A内容(企業によってはQ&A要約バージョン)、ESG方針、株主還元政策などの資料の増加を評価している。 また最近ではその情報のみでは直ちに株式の投資判断に影響を及ぼすとは言えないような月次売上高、月次受注高、月次店舗売上高などの様な「モザイク情報」の開示までも積極的に提供する企業が増加しており、これらの資料がHPに掲載されていることによる情報へのアクセサビリティーの向上も評価されている。

更に同アンケート調査で機関投資家及びセルサイドが「最も望ましい」企業のコミュニケーション手段と回答しているのが、FDルール導入後に増加傾向を辿っている、①決算説明会のビデオファイル(または音声ファイル)と②決算説明会内容のテキストコンテンツのHPへの掲載である。 これらがHPに掲載されることによって、決算説明会に参加出来ない機関投資家やセルサイド・アナリストもタイムラグはあるものの決算説明会とほぼ同じ内容を知ることが可能になる。 特に②番目のテキストコンテンツに関しては、それが当社の「トランスクリプト」だと明記はされていないが、同様のテキストコンテンツを作成している情報ベンダーがほとんど存在していないことに加え、当社は既に日本だけで500社を超える企業の「トランスクリプト」の作成を手掛けていることを鑑みれば、それらは当社の「トランスクリプト」の可能性が高く、だとすればFD導入後に投資家が評価している企業IRの変化に一役買うことが出来大変喜ばしい。

企業のIR活動や経営陣もランキングされる時代に

日本証券アナリスト協会は、協会に登録している機関投資家及びセルサイド・アナリストの会員の投票によって「証券アナリストによるディスクロージャー優良企業」の選定を毎年行っている。 評価方法は次の5つの分野において採点がなされ、業種ごとの”ベストIR企業”が選ばれる。 注目すべきことは、5項目の中で最も得点配分が高く設定されているのが (b)の「説明会、インタビュー、説明資料における開示」になっていることである。

  • 経営陣の IR 姿勢、IR 部門の機能、IR の基本スタンス
  • 説明会、インタビュー、説明資料等における開示
  • フェア・ディスクロージャー対する姿勢
  • コーポレート・ カバナンスに関連する情報の開示
  • 各業種の状況に即した自主的な情報開示

また長年続けられている機関投資家投票による証券会社に所属するセルサイド・アナリストのランキング投票(“All Japan-Research Ranking”)を行ってきたInstitutional Investor社も近年ではそのランキング投票の範囲を企業のIR活動や経営陣まで広げている(The All-Japan Executive Team)。 投票は機関投資家およびセルサイド・アナリストによって行われ、主な評価項目は以下の通りで、企業の株価や業績動向とは明確に線引きされた評価項目に対して採点がなされ、ランキングの高いIR活動を行っている経営陣やIRチームの表彰を行っている。

  • シニアマネジメントへのアクセサビリティー
  • IR担当者は企業を代表し情報公開を行える正式な権限を有する
  • タイムリー且つ適切な財務開示がなされている
  • リクエストや問合せに対する迅速且つ徹底された対応力
  • 有意義で内容の質が高いコンファレンスやミーティングが行える
  • HPに掲載されている開示情報が豊富で且つ閲覧し易い
  • 企業の開示情報資料の質が高い
  • ロードショウおよびリバース・ロードショウを行っている

日本証券アナリスト協会やInstitutional Investor 社などによる“ベストIR企業”や“The All-Japan Executive Team”で上位にランキングされた企業とその株価パフォーマンスの因果関係はわからないが、まったく皆無でない気もする。 IR活動がさほど活発でない企業も業績に注目すべき変化があれば株価は良いパフォーマンスを示すであろう。

「トランスクリプト」は企業および株式市場参加者に利便性をもたらす情報ツール

決算説明会に参加するとわかるが、昔と違い企業はまったくと言っていいほど決算短信を使った説明は行わない。 決算短信は会場で配布される程度で、決算説明会によっては配布もされず会場入口の受付の隅に積まれ、欲しい人だけ自分でとるケースも珍しくない。 企業は最初の30-40分間程度の時間を“決算説明会補足資料”と呼ばれる資料を用いて説明を行うスタイルがほとんどである。 大半の“決算説明会補足資料”はスライド形式の図表で構成されており、大半の企業は30〜50枚の図表を準備し、”決算説明会補足資料”、”中期経営計画”、“E S Gの取り組み”というようにトピックごとに図表振り分けて資料を作成している。

多くの図表を使って“決算説明会補足資料”の内容が充実されることはFDルールの情報開示の観点からも歓迎すべきことである。 しかし決算説明会に参加出来た人と出来なかった人との間にはますます情報に対する不公平さが広がることは否めない。 特にほとんどの図表はグラフや数字が中心で、影響を及ぼした背景、要因、状況、などに関しては登壇者が口頭で説明を行っていくため、HPで図表ばかりの決算説明会補足資料を入手できたとしても、図表によっては内容がよく把握されないことがある。 これでは投資家にとっても積極的に情報の提供を図ろうとしている企業にとってもマイナスである。

確かに決算説明会に参加すればいいのであろうが、参加したくても様々な理由から参加出来ない投資家やアナリストはいる。 その典型的な例は海外にいる外国人機関投資家であろう。日本の上場企業のうち、99%以上は日本に本社を置く”生粋”の日本企業で、株主も、多くは国内金融機関や個人投資家が約70%を占めている。 外国人機関投資家は30%程度に過ぎないが、しかし日本株売買のシェアとなると、外国人機関投資家の割合は過半数を大きく上回り約60〜70%まで跳ね上がる。 もちろんこの大量に売買をする外国人機関投資家の中には在日しており日本語も堪能で決算説明会に参加可能な外国人機関投資家もいるが、これらの在日外国人機関投資家が占める売買シェアはこの1/3以下とも言われている。

当社の「トランスクリプト」はこのような環境で生じてしまう、情報アクセスの不公平さを是正することに貢献できる。 当社が作成する決算説明会の「トランスクリプト」は決算説明会において一部始終口頭で説明されたことを正確に文字に起こしており、説明者が補足的に加えた図表などに関する背景、要因、状況もすべて当該図表の下に「トランスクリプト」として盛り込まれている。 「トランスクリプト」は英語も同時に作成されており、海外の外国人投資家にとって利便性は高い。 しかも非常にスピーディーに「トランスクリプト」の作成を行っており、日本語なら決算説明会の翌日の午前8時に完成され、英語バージョンはイベントの翌々日の午前8時に出来上がっている。 企業には無償で「トランスクリプト」の作成を行っていて、作成した「トランスクリプト」は企業が自由に使え、実際HPに掲載している企業も少なくない。

「トランスクリプト」はビデオファイルを超える

FDルール施行後、決算説明会の模様を録画したビデオファイルHPに掲載する企業が急速に増加してきていることは前述のとおりである。 ビデオファイルであれば図表のグラフや数値に関する背景、要因、状況の説明も録画されているので決算説明会に参加出来なかった機関投資家にとっても決算説明補足資料の内容に対する理解を深めることはできる。 ただ、短所として挙げておかなければならないのは、決算説明会などのイベントが行われてから、それらがビデオファイル として企業のHP に掲載されるまでの時間がかかり過ぎるという点である。

当社が約50社あまりの企業で日本語ビデオファイルがHPに掲載されるまでに要する日数を調べた限りでは、決算説明会の開催された日から数えて概ね平均7日間程度の時間が必要とされている。 例外もあるが傾向として大型時価総額企業は概ね全体平均よりも短い3〜4日間という企業が多かった。 大型時価総額企業の中で、自社で録画から編集まですべて自前で行える企業は、決算説明会の翌日にはHPに掲載が出来ている企業もあるが、それは本当にほんの一部の企業に限られる。 中小型時価総額企業は平均10日間程度のタイムラグがある。 更に英語版のビデオファイルをHPに掲載している企業は大型時価総額企業の中でもごく僅かで、CEOが外国人の企業以外は殆どアテレコ編集を施されたビデオファイルや、説明を英語に置き換えただけのオーディオファイルの掲載に留まって。 問題は英語のアテレコビデオファイルや英語オーディオファイルではなく、それらを作成するには日本語バージョンのビデオファイルよりも更に数日間の追加的時間が必要になっている。

2018年に施行されたFDルールには特に決算説明会に使用された資料、また説明会の動画をHPに掲載しなければならないとは明記されてはいない。 従って、これらがHPに掲載されるまでのタイムラグはFDルール上なんら問題にはならない。 何故ならば決算説明会そのものはFDルールで“対象となる「重要情報」”の範囲に入っていないからだと考えられる。 「重要情報」の定義はFDルールのガイドラインで未公表の確定的な情報であって、公表されれば”有価証券の価値に重要な影響を及ぼす蓋然性のある情報”と説明されている。 この解釈は難しく、企業や株式市場の参加者からは具体的に個別で「重要情報」がなんであるか定められることを望む声も少なくない。

例えば企業の業績予想や決算情報を例にとれば、売上高及び利益がそれぞれ当初予想より10%および30%以上の乖離する状況が確定的になった場合、「重要情報」の開示方法として使って良いEDINE(Electronic Disclosure for Investors’ NETwork)の法定開示、また適時開示情報伝達システムのTDNet(Timely Disclosure network)などを通じて速やかに「重要情報」の開示を行うものと企業は指導されている。ほとんどの企業はその「重要情報」を開示した当日、または少なくとも次の “決算説明会”において、その「業績修正の重要情報」に至った背景、要因、状況、またそれらが将来の業績に影響を及ぼす可能性(「有価証券の価値に影響を及ぼす」)の説明を行っている。 であるとするならば、決算説明会のようなイベントは「重要情報」に準じた扱いになっても不思議ではなく、 企業がHPにビデオファイルを掲載するまでにかかる著しいタイムラグはもう少し是正されるべきではないだろうか。 そうならない限り決算説明に参加できた投資家と出来なかった投資家との情報アクセスのスピードの差は決して埋まることはない。 当社の可及的速やかに提供される「トランスクリプト」はその差を補えることは可能であり、情報伝達の公平性の確保に貢献することができる。